Diary-1 日記で書いていた徒然。
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空は薄紫に移り行く。月は淡く、風は冷たい。
同じ時を共有する、見知らぬヒトビトの群れ。
窓は無い。巨大なスクリーンは空を写す。
震えるのは、声弦。
密やかに息を飲む音。
しとやかに頬を濡らす少女。
あたしの喉は潰れてなどいない。
まだうたえるまだうたえるまだうたえる。
照らされるのは遠い場所。
距離はちかい。掴み取れそう。でも。
延ばした先は空っぽ。
どこまでも遠い。そこは遠い場所。
震えているのは足。両の足。
ふみしめる。それほどに共鳴する。
鈴のように笑う。足下で鈴はなる。
ただ空気を震わすだけだと言うのに。
ここは遠い。あまりに遠い。
浮かびは消える幻想。
月は奇妙にかけている。
震えているのは声弦。
ここはあまりにも遠い。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ただシャンシャンと雨は降り。
降りしきる雨はゆっくりと肩をぬらした。
色とりどりの傘の花が、立っている彼女の目の前を通り過ぎていく。
彼女を気に止める人はない。人々はみな俯きつつ足早に通り過ぎる。
額からつたう雨のしずくをぬぐうでもなく
(もっともこの雨では意味のないことであろうが)
彼女はそこに立ちすくんでいた。
彼女の目の前、つまり車道の手前のほうにそれは横たわっている。
既にしなやかさも毛の柔らかさも、あの愛くるしい声も失って
彼女の足元をまとわりついていた頃より一回り小さく見える体を
シャンシャンと降り注ぐ雨の中にさらしていた。
いつもぴんと伸ばしていた鍵型の長い尻尾はだらりと投げ出されて
大方流されてしまった赤い水溜りが緩やかに排水溝へと流れ込む。
降りしきる雨はゆっくりと肩をぬらした。
彼女はただ、車道に横たわったものを観ている。
雨は一向に止む気配がなく、人々は彼女の前を通り過ぎ、
初夏の雨は、ゆっくりと彼女の体を冷やしっていった。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++違うからって関係ないわ
悲しい悲しいと言ってあなたは泣く。
悲しい悲しいとあたしも呟く。
悲しい悲しいとあなたは泣いて、
悲しい悲しいとあたしの顔を見ない。
あなたの髪はいつもの様にサラサラとしていて
あたしの髪はふわふわしている。
あたしの心もふわふわしている。
ここじゃないどこかにいっている。
泣いて、泣いて泣いて泣いて。
それでも、
あたしは幸せで幸せでいるのです。
擦れ違ったり遠くなったり近くなったり離れたり。
こうやってヒトの距離というヤツは
かくのごとく、難しい難しいものです。
そういうふうにあたしがいったら、
あなたはなんて言うのかしら。
なんにもわかってないと言うかしら。
本当に…そうね。分かってないのでしょうね。
あたしは幸せで幸せで、
あまりになにも見えていないのだもの。
そうね。見えてない。
だから、いたしかたないかもしれないわ。
だってあたしにとっていまわかるのは
あなたが泣いている。
あなたが泣いているということだけだもの。
心のありかなんて痛むからすぐにわかる。+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
心
痛む
これは
例えれば
恋という事
幸せという事
悲しいという事
サビシイという事
苦しくなるという事
胸が痛くなるという事
自分に絶望するという事
相手を大切に思うという事
相手の幸せをねがうという事
独りでは歩けなくなるという事
世界がきらきらに見えるという事
愛しくて愛しくて堪らないという事
涙が止まらなく溢れてしまうという事
手をつないで世界を回してゆくという事
もう決して後戻りなんてできないという事
白。++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
あたしの瞼の裏に住まう狂気は、ミルク色というよりは白い。
白くてツルリとした表紙をしていて透き通るように薄く、軽い。
あたしは狂気の端を指先で軽くつまみ、ゆらゆらと泳がせる。
狂気はゆるやかに舞い、やがてあたしの目の前を覆ってしまう。
私の耳に残るのはしゃらりという布ずれのような音だけが。
狂気に覆われた瞼の裏で、あたしは手を、声を思いだす。
あたしはひどく陶酔し、右も左もどうでも良くなりながら、
冷静にパズルを組み立てるように想う。
パズルはしだいに組み上がり、あたしは唐突に理由を思いだす。
あたしの中に狂気が住まう理由、今の状態を生み出した原因を。
けれど、それはすぐにほどけて分からなくなってしまう。
狂気し覆われた頭は常に流動し加速しては砕けてしまう。
望んでも望んでも、待っても待っても待っても待っても。
何にも無い。
何にも無いがある以外には。何も無い。
狂気は白く、あたしを覆い隠し、緩やかに広がって行く。
あたしは瞼の裏で、花火の光を見る。しゃらしゃらと光る花火。
花火は指先を焼いて、足に火をつけて、やがて燃え移る。
まぶしくてまぶしくて誰が焼けているのかわからない。
なのに、炭になった指先からこぼれる火花は繊細にきらめき、
きらきらきらきら悲しげに落ちては消える。
もういいよ、花火なんて。
あたしはつぶやく。もういいよもういいよもういいよ。
まるで隠れんぼの子供のように。膝を抱えてつぶやきつづける。
もういいよ。
でもすべては瞼のうらの出来事なので、どうすることもできないのです。
あたしの体を白い狂気がそっと埋めこんでゆく。
オレンジと海と落下する夕方++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
夢を見た。夢を見たので、シャワーを浴びて外へ出る。もう夕方に差し掛かった時間だ。冬場なら七つの子か何かが流れ始める時間。洗い立ての髪を風がすいてゆくのが心地よい。
私の前をきれいな青いスカートが翻る。それはとても青くてまるで海の波のように清らかだ。夕方の日差しは私のうなじをそっと撫ぜ、空気は心地よく私を包んだ。泣いた、涙のあとに隠すようにオレンジの光が染み込んで、あたしはしばし目を閉じた。
あの子は昨日どんな服を着ていたっけ。まるで夢の味を確かめるように思う。白いワンピース。そうだ、可愛いい白いワンピース。あれは一緒に買いに行ったんだ。私には似合わなくても、あの子には似合う。そんなワンピース。白くて薄紫のレースにリボン。本当は少し、うらやましかった。でも私よりお洋服に愛されているのは確かだったからあれは私のワンピースでは無かった。そんなことをかんがえてから目を開けると、向こうの方に、さっきの青いスカートがみえた。ひらりひらり。ゆっくりと翻る。足首が白い。夢を見た。夢を見たので外に出た。
その夢は海の夢だった。そこはイタリアかなにか(スペインかもしれない、スペイン語とイタリア語はよく似ているから)で、あたしは年老いた紳士と暮らしている。それはとても大きなお屋敷で、海の見える広すぎない部屋が、私の部屋だった。隣りには私の大好きな人が暮らしていて、まるで双子のように、毎日手をつないで買い物へ行く。時々海で泳いだり、お昼寝したり、楽しい日々を過ごす。私のすむ家は白くて、まるでくりぬいたように白くて、私は幸せだ。老紳士は私たちを微笑ましく眺め、優しく頭をなぜてくれる。大好きなものと大好きなものと大好きなものに囲まれて、私は幸せに暮らしている。たったそれだけの夢。でも、遠く遠くにその夢はあって、そっと涙を拭った。私の欲しい幸せの形が、そこにはあった私の切望して止まない世界がそこにはあった。
夕方の日差しはゆっくりと傾いて、太陽は落下を始める。明日も晴れる、と呟きながら携帯をこつこつと叩いて、私は待っている。あの海の、綺麗な感情は私の心を満たしている。私はもう、平気なのだ。綺麗な綺麗な感情で、私はあの子のことを思う。愛しい、と、思う。静かに静かに携帯が歌いだすのを待ちながら、私は太陽が落下するのをみている。
DIARY 05'19'05-07'19'05より
なんか精神状態とかかなり出てて面白い。
分かりやすさはぴかいちですね!